AIがもたらすインサイトがすぐれた顧客体験を実現する

執筆者:マジック・ツー(Magic Tu)製品マネジメント担当部長、Appier, Inc.

企業にとって優れた顧客体験を提供することは、最優先課題の一つです。しかし、顧客体験を向上させるためには、彼らをよりよく理解するためのインサイトが必要です。Appierは、人工知能(AI)を活用することでインサイトの獲得を可能にしています。

 

消費者は、これまでにないほど多くの選択肢に恵まれている一方で、Webサイトやモバイルアプリが使いやすくなったことから競合サービスに簡単に切り替えることができます。多くの企業は、こうした流動的なデジタル経済において新規顧客を獲得し、既存顧客を維持するというプレッシャーに直面しています。企業が市場で優位に立つためには顧客体験を向上させることが重要であると考えています。しかし、彼らはそのためには、顧客をより深く理解する必要があります。

顧客をより深く理解する

企業と顧客との相互作用の結果として定義される顧客体験は、単純に企業が提供するサービスや価格によって決定されるのではなく、顧客にとって最も重要なことに一貫して対応することによって決定されます。たとえば、頻繁に旅行をする宿泊客は、チェックインの対応が遅いことに不満を抱いた場合、そのホテルに最高級のプールやジムが備わっていても、否定的な印象を残す可能性があります。一方、家族を連れて旅行中の宿泊客は、同様にチェックインの対応が遅くても、幼い子供が寝るために無料のベッドが提供された場合、逆に良い思い出を残す可能性があります。

時間が経つにつれ、このような顧客体験の積み重ねは、顧客が宿泊先を競合ホテルに切り替えるのか、または忠実な顧客として残るのかを決定づける転換点に達します。そのため、それぞれの顧客が何を求めているのかを理解し、それを提供することが並外れた顧客体験につながると言えます。

街角にあるコーヒーショップのバリスタにとっては、常連客の好みを覚え、名前で挨拶することが好ましい顧客体験の提供につながるかもしれません。しかし、ほとんどの企業にとっては、これは現実的な話ではありません。企業が顧客をより深く理解できる唯一の現実的な方法は、顧客の記録と取引データを分析し、それぞれの好みや一般的なトレンドに関するインサイトを得ることです。そして、これらのインサイトを活用することで、既存サービスの向上、新規機能の開発、それぞれの顧客に合わせてカスタマイズされたプロモーションなどが可能になります。

残念なことに、顧客動向に関して統一された視点を得ることに、ほとんどの企業が苦労しており、現代の消費者が企業とコミュニケーションを取る手段が増えすぎていることも、顧客の理解を複雑化しています。

AIの力

ここにAIが果たす役割があります。膨大な量のデータを休むことなく正確に分析できるため、これまでのやり方では不可能だった画期的なインサイトを企業にもたらします。このインサイトを元にビジネスのアイディアを企画実行することで競争優位性を得られるでしょう。AIにより、マーケターやプロダクトマネージャーは、自分たちの本能を頼りにする「直感主導」のマーケティングアプローチから離れ、データ主導の戦略に移行することが可能になります。

AIは、多数の情報ソースからの顧客データを相互参照することで、顧客に関する正確なモデルを構築し、顧客にリーチする最良の方法を提示します。

また、顧客の将来的な行動の予測に活用できるインサイトを得ることで、マーケターは自社のキャンペーンを進化させることができます。現在、マーケターが利用できる最もエキサイティングなツールの一つに、AIによる「予測したオーディエンスのセグメンテーション機能」があります。企業は、予測分析の大分類として予測したオーディエンスのセグメンテーションを活用することで、KPI(重要業績評価指標)にかかわらず、販売量、クリック数、インストール率などにコンバージョンする可能性が最も高いターゲットオーディエンスを特定できるようになります。

最も進化した予測したオーディエンスのセグメンテーションツールは、顧客データベースやインターネットの閲覧・検索履歴から収集した行動パターンを分析し、精度の高いリードを抽出することで、トレンドを特定する属性データに統合します。このツールにより顧客のセグメントの質を向上させることにつながります。さらにこのデータを分析し、新規オーディエンスの発掘や拡大に役立つ様々な指標(レコメンデーション)を提示することも可能です。

台湾のメディアグループ大手であるコモンウェルスマガジンは、新規顧客の開拓にAppierの「アイソン」プラットフォームの「予測したオーディエンスのセグメンテーション機能」を活用したことで、同社サイトの購読者および販売が400%以上増加しました。

データ主導の世界

今や経済活動を主導するのはデータであり、AIが重要な技術であることに疑いの余地はありません。伝統的なマーケティングプロモーションは、過去のデータに基づく推測から発案されたものです。多くの企業は経験豊富な従業員の知見や経験によってプロモーションを企画・実行しますが、それらはすでに有効性を失っていたり、拡張性が低い可能性が高いのです。一方、AIを利用することで、データから適切なインサイトを獲得し、それをプロモーションに活用することが可能になります。

AIは、ビジネス上のすべての問題を解決できるわけではありません。AIを上手に適用させるには、分析に必要なボリュームのデータを収集し、構造化されたプロセスを正確に実行する必要があります。こうした環境でAIを稼働させることができれば、AIは休むことなく正確にデータを処理、分析します。AppierはAIが導きだすインサイトによって企業はイノベーションを推進し、ビジネスに目に見える恩恵をもたらす可能性が高いと確信しています。

執筆者:マジック・ツー(Magic Tu)製品マネジメント担当部長、Appier, Inc.

2016年にAppierに入社以来、研究開発、プロダクトマネジメント、マーケティング、営業などの様々なチームと連携しながら、製品の企画段階から市場投入までのプロセスの合理化、円滑化業務を統括。Appier入社以前には、スマートフォンと仮想現実(VR)機器メーカーのHTC社にてソフトウェア製品マネジメント担当のディレクターとして、HTCが独自の設計思想で開発するユーザーエクスペリエンスであるHTC Sense のプランニングを担当。同社ではプログラムマネジメントチームを統括し、Google、Yahoo、マイクロソフト、ノキアなどのベンダーやパートナーとの共同プロジェクトの管理運営を行った。HTC社以前には、台湾の電子設計オートメーション分野において有数の企業であるSpringsoft 社(現 Synopsys社)のリード開発者を務めた。国立台湾大学にてコンピュータ・サイエンスの学士、修士を取得。

 

 

 

2018年は、AIが喜びと驚きをもたらす年に

シュアン・テン・リン(Dr. Hsuan-Tien Lin)、Appierチーフデータサイエンティスト

現在、深層学習および機械学習技術を基盤とする人工知能(AI)システムは、企業の様々な場面で活用されています。活用事例として、営業活動の支援、業務の効率化、生産性を向上させる新しいインサイトの提供などが挙げられます。この技術は、多種多様なハードウェアとソフトウェアに搭載され、腕時計、通信機器、自動車などに活用されています。AIは、その高い有用性ゆえ、AIおよび認知システムに関連する世界的な消費額が2017年には125億ドルに達し、2016年に比べて59.3%増加するとIDCは予測しています。

主要業界アナリストは、AI技術の使用が2017年に変曲点に達したと述べており、Appierも同意するところです。Deepmind社は、2017年10月、同社のAlphaGo Zero AIが過去の対局をまったく参照せずに囲碁の打ち方を学習し、先代システムを打ち負かしたと発表しました。また、ベルギーのルーヴェン市に本部を置く国際研究機関Imecは、2017年、オリジナルの音楽を作曲するだけでなく、新しいタイプの音楽を参照させるだけで、いろいろなジャンルの音楽を作曲できるように学習する、自己学習型チップを発表しました。こうした飛躍的な進展以前は、求めている結果を得るために既存のデータセットをトレーニングする必要があり、自己学習は不可能と考えられていたのです。

2017年において数多くのAIを取り巻くニュースや進展がありましたが、Appierでは、2018年も引き続きAIの世界がサイエンスフィクションそのままの、驚くような能力をもたらすであろうと考えています:

  1. AIは、より速く、正確に、万能になる

私たちは現在、AI技術が主流になるであろう2020年に向かって進んでいます。Gartnerは、AIが多くのアプリケーションやサービスで活用され、企業におけるデジタル化への取り組みが2025年まで実質的な利益につながると分析しています。また、IDCは、AIおよび認知システムに関連する消費額においてアジア太平洋地域が2020年までに世界第二位の地域になると予測しています。

今後もAI研究で多くの偉業が達成されることが予想されます。AIがより大規模で高性能のハードウェアとソフトウェアの発展を牽引することで、企業は、今までより正確な予測や推奨を実現させるようになります。また、AIは、アプリケーションの開発や導入を自動化できるため、革新的な製品やサービスの市場投入までの時間を短縮できるようになります。一方、企業にとっては、特定の市場セグメントにターゲットを絞り、少数のカスタマイズしたブランドを顧客の嗜好に合わせて順次アップデートすることで、大量生産が不要になる可能性もあります。

  1. AIは、実用的なビジネスコンサルタントになる

AIは現在、すでにビジネスに関連するデータの意味を理解しており、マーケティングの強化や業務の質の改善に役立てることができる情報の獲得や予測に貢献しています。Appierの、AIをベースにしたアイソン(Aixon)プラットフォームは、消費者動向の予測に貢献しており、アイソンの導入企業は増加しています。ベンダー各社は、AI技術がもたらす量的および質的メリットを紹介できるようになります。そしてより多くの企業がAIによる成果を実感することで、AIシステムを積極的に採用し、その推奨への信頼性が高まることのなると予想されます。

  1. AIは、核心的な技術になる

Appierでは、AIがより核心的な技術として活用されると考えています。 AIは、2011年から2015年まで、その将来性を発揮し、2016年から2020年までには、ますます商用化が進みます。 2020年からは、私たちの生活や、問題を解決するために効果的に使われる技術として不可欠なものになることでしょう。

私たちは現在、2016年から2020年というサイクルの真っ只中です。AIを搭載したシステムは、2018年には、さまざまな商用トライアルで性能が試され、より多くの都市の限定的な環境に導入されることになるでしょう。また、より多くのベンダーは、市場の需要に応え、AIによるデータ分析を可能にするビジネス関連ソフトウェアやサービスを提供することになります。アプリケーションに関しては、ブランドに興味を失う可能性がある(離脱する)顧客を予測したり、よりパーソナライズされた接客方法を推奨したりすることで、顧客の獲得や維持を容易にするソフトウェアが一般的になります。

  1. AIは、ユーザーインターフェイスとして信頼を得る

AppleのSiriやAmazonのAlexaなど、チャットボットや音声作動式のデジタルアシスタントは、2018年には、よりスマートで万能になるため、より多くの人が物事をこなすために使うようになり、より多くの企業が一次レベルの顧客サービスに採用するようになります。これらのアプリケーションは、音声やタイピングによる会話をAIによって理解し、従来のソフトウェアよりも知的に人と交流することが可能になります。

Beige Market Intelligenceは、チャットボットの有用性に関する認識が広まるにつれ、2016年から2022年の間にチャットボットの世界市場が28%以上の年平均成長率(CAGR)を記録すると予測しています。Forresterは、『2018年予測:デジタルディスラプションがB2Bマーケティングの新たな常識になる』と題されたレポートで、より多くのベンダーがこの市場に参入すると報告しています。また、Forresterは、この技術が潜在顧客を発掘するのに十分強力になり、それに応じてフォローアップすることも可能になると予測しています。チャットボットやバーチャルアシスタントは通常、短い対話を処理しますが、近い将来には、長い会話を認識するようになる可能性もあります。

AIが私たちの生活に果たす役割

AIを導入することで私たちの暮らしや仕事は変化するでしょう。AIは、同じことを繰り返す、時間のかかるような仕事や、危険な場所での仕事など、人間よりも多くの作業をこなすことができます。しかし、AIが人間に置き換わり、すべての仕事を刷るようにはなりません。新しいAIを基盤とするアプリケーションは、私たちの生活水準を向上させ、私たちがしたいことにより多くの時間を費やせるようにしてくれます。

CapGeminiの調査では、世界の8割の企業で、まったく新しいタイプの仕事が生まれる可能性があると報告しています。今後は、データサイエンティストやプロジェクトマネージャーといった仕事が求められるようになります。AIによって社会やビジネスが再編される可能性がある中で、将来どのようなスキルが必要になるのかを想像することは難しいことです。私たちがキャリアを構築するために自分で強化できる重要なスキルは、変化に素早く適応できる能力です。

AIシステムのトレーニングに使用できる現実世界の顧客データをすでに保有している企業は、近い将来、先頭集団として他をリードすることになるでしょう。Gartnerは、すでに企業の59%がAI戦略に取り組んでおり、その他の企業もAIソリューションをテストしている段階にあると報告しています。アジア太平洋地域では、企業がAIについて真剣に捉える時が来ています。

われわれが今から実行すべきこと、それは、AIがもたらす世界に適応するための準備です。AIに対応できる人材を養成しますか?導入予定の技術にAIのコンポーネントが含まれているのかを調べましたか?または、独自のAI技術を社内で開発すること検討していますか?今から取り組めば将来、必ず役に立つはずです。

シュアン・テン・リン

リンは、アジアの人工知能コミュニティの中心的人物。国立台湾大学のコンピュータ・サイエンスおよびデータエンジニアリング学部の准教授からAppier のChief Data Scientistに就任。リンの研究対象は、機械学習の理論基盤、新しい学習課題の研究や学習アルゴリズムの改善などが含まれます。

 

 

2010年から2013年の間、リンは国立台湾大学のチームを共同統括し、機械学習の競技会であるKDD Cupにおいて同チームを6度の優勝に導きました。彼の共著である初歩の機械学習の教科書「データから学習すること(Learning from Data)」はアマゾンのベストセラーです。

コーセラ (Coursera)が運営するオン・ライン学習において、機械学習コースを担当し、これまでに数百万回視聴されています。(コーセラとは、スタンフォード大学コンピュータサイエンス教授Andrew NgとDaphne Kollerによって創立された教育技術の営利団体。世界中の多くの大学と協力し、それらの大学のコースのいくつかを無償でオンライン上に提供。)2013年、2014年に台湾人工知能学会の事務局長を務めました。

リンは、カリフォルニア工科大学からコンピュータサイエンスの博士号、修士号を取得。AppierのCDS就任前には、コンサルタントとして同社を支援していました。

【受賞歴】

  • 2017年 Foundation for the Advancement of Outstanding Scholarship (FAOS)から若手研究者におけるクリエイティブアワードを受賞
  • 2013年 台湾国立科学カウンシルから-Y. Wu 記念賞を受賞
  • 2012年 ACM(Association for Computing Machinery)台北支部から-T. Li 若手研究者賞を受賞 <国立台湾大学からの受賞>
  • 2016年 優秀教授賞
  • 2013年 優秀メンター賞
  • 2011年 功労教授賞