なぜ企業は消費者の購買意思決定プロセスの理解が必要なのか?

執筆者:ファブリッツィオ・カルーソ、最高売上責任者(CRO)、Appier

マスマーケティングの時代であった70年代や80年代、消費者にリーチすることは、今よりもはるかに容易でした。現代の消費者は、複数の携帯端末(デバイス)を利用している分、関心が細分化され、情報過多ともいえる状態では買い物の意思決定は複雑にならざるを得ません。

多くの情報に接触している現代の消費者は、毎日多くの時間を複数のデバイスに費やしています。アジアの複数のデバイスを保有するユーザーは、半数以上(51%)が2台以上、そのうち、4分の1(26%)以上が4台以上のデバイスを使用しています。そのため、マーケターが、消費者の購買意思決定に影響を与えるポイント(タッチポイント)で消費者にリーチしたいなら、従来とは異なる手法を使う必要があります。

過去、消費者へのタッチポイントの多くは、テレビのコマーシャルや新聞の広告でした。マーケターにとっては単純なアプローチでしたが、マーケティングの選択肢という意味では限られたものでした。今は複数のデバイスを通じてリーチしなければならず、手法の複雑化は進んでいますが、広告主は複数のタッチポイントで購買意思決定に影響を与えることができるため、チャンスは増えているのです。

デバイス間トラッキングが難しい理由

Appierは消費者に効果的にリーチするには、デバイスを横断したキャンペーンを最適化することが不可欠だと考えています。その際、企業は以下の2つの点に留意しなければなりません。

  1. 同一の消費者が複数のデバイスを所有していることが当たり前になっていることから、デバイス中心のアプローチから消費者中心のアプローチに切り替えること。
  2. 消費者が好むチャネル、購買意思決定が好んで行われるタッチポイントを知ること。これには、購入を悩んでいる段階、購買にむけて調査や評価をしている段階、購入段階が含まれます。

さらに、自社のマーケティングを成功させるために、以下の4点を確認するべきです。

  1. どのくらいの情報がデバイス間でクロスオーバーしているのか?
  2. ブランドに対してアクションを起こさせるために最適なエンゲージメントを、最適な頻度で実現するには?
  3. 過剰な費用の投下もしくはブランドイメージの低下をもたらしていないか?
  4. 集客ファネルの間口を広げるために最適なデバイスは?ダイレクトレスポンスマーケティングに最適なデバイスは?

AI(人工知能)を使えば、広告を見たユーザー数、場所、デバイスの種類、デバイス間コンバージョン経路といった情報を収集し、それを分析することにより、ユーザーに関する制度の高いインサイトを獲得できます。こうしたインサイトは、広告をクリックする直前に使用された最後のデバイスだけでなく、消費者の購買意思決定プロセス全体で各デバイスが果たす役割の把握に有効です。広告主は各デバイスを通じて発信される自社のブランド資産を最適化し、クリックスルー、エンゲージメント、コンバージョンなど、ROIの最大化が可能です。

より多くのオンライン購入を実現するために

世界的な小売企業であるカルフール(Carrefour)は、オンラインストアの開始に伴って、より多くの潜在顧客にリーチする手法を探していました。同社のマーケティングチームは顧客獲得単価(CPA)を最適化しつつ、自社の認知度を高め、より多くのオンライン購入につなげたいと考えていました。

Carrefourは、AppierのAI技術を活用したことで、同一のユーザーが所有している全デバイスを何十億というデータポイントから特定することができました。たとえば、潜在的な購入者がラップトップPCでCarrefourのオンラインストアを訪問すると、Appierは、その人物のプロフィールを分析し、嗜好に合致した製品情報を同一の人物が所有している他のデバイス(スマートフォン)に表示させることで、Carrefourのオンラインストアでの購入を促進しました。

AppierのAIは、ウェブサイトの中と外の両方でユーザー動向を分析し、単一のユーザーに関する行動を判定するだけでなく、その人物と類似したユーザーグループを抽出することが可能です。Appier CrossXデータベースによるオーディエンスデータ比較やマルチ次元分析は、類似する顧客分類の中から潜在顧客を特定し、広告主のマーケティング施策に最適なユーザーベースを構築できます。

Carrefourは、Appierとのパートナーシップのもと、単一のデバイスを持つユーザーと比較して、複数のデバイスを保有するユーザーのクリックスルー率(CTR)を87%、コンバージョン率(CVR)を40%向上させることができました。

アプリ登録者の拡大につなげるには

人気のマッチングアプリであるパクトル(Paktor)は、AppierのAIを活用することで、アプリ内のチュートリアルを最適化し、より多くのユーザー登録数を獲得することができました。AppierのAI技術は、数十億のデータポイントからクロスデバイス動向と「多くの人との交流」や「新しい出会い」というユーザーの興味を素早く特定することが可能です。

潜在的な購入者がPaktorのアプリをダウンロードすると、クロスデバイスアプローチにより、「多くの人との交流」や「新しい出会い」に関連する情報を同一のユーザーが所有する全デバイスでリマーケットします。これにより、Paktorブランドの印象を深め、VIPメンバーになるモチベーションを促すことができます。

ブランドセーフティに関する懸念

オンライン広告が自社のブランドに悪影響を与えるような状況で表示されることを危惧している企業が少なくありません。ブランドセーフティ(広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性)は、顧客へのリーチやエンゲージメントに加え、デジタルマーケティングの懸念材料の1つです。

ブランドセーフティには、さまざまな要素がありますが、特に、オンライン広告のインプレッション数、クリック数、コンバージョン率を不正に操作して利益を発生させようとする広告詐欺(アドフラウド)が問題になっています。AIは、こうしたアドフラウドを撃退し、ブランドセーフティを確保することができます。Appierの調査によると、AIによる不正検出モデルは、従来のルールベースと比較した場合、2倍の不正行為を特定することが可能です。

最後に

消費者の購買意思決定プロセスが劇的に変わりつつあります。マーケターは適切なアプローチをとることで、適切なデバイスを通じて適切なタイミングで顧客にリーチすることができるようになります。皆さんの会社のデバイス横断によるキャンペーンは、どのように最適化されていますか?クリックスルーやコンバージョンを増やす方法、ブランドセーフティ対策にお困りなら、Appierにお問い合わせください。

著者について

ファブリッツィオ・カルーソは、Appier のチーフレベニューオフィサーとして、Appierの顧客である広告主企業や広告代理店パートナーの成功に導くため、セールスチームを統括しています。

デジタル、モバイル業界で15年以上の経験を持ち、アジア地域で有数のブランド企業、広告代理店、モバイルオペレータ、出版社との強いパートナーシップを構築してきました。カルーソはモバイルペイメント、モバイル・インターネットコンテント、モバイル広告業界においてマネジメント、プランニング、マーケティングに豊富な経験を有します。ワイヤレスおよびインターネット技術に造詣が深く、数々の講演や寄稿を行っています。Appier に入社前は、モバイルインターネット、モバイル広告をリードするOpera Software 社にてアジア地域担当シニアバイスプレジデントを務めました。それ以前にはOut There Media社でアジア太平洋地域担当マネジメントディレクタ兼ビジネスデベロップメント担当バイスプレジデントを務め、Buongiorno and Amdocs社のシニアマネジメント職を歴任しました。 カルーソは、イタリアのカターニア大学でコンピューターサイエンス工学の修士号を取得しました。

 

AIでアドフラウドを撃退

アドフラウド(広告詐欺)はデジタル広告業界にとって多額の被害を与えています。
Appierの最高技術責任者(CTO)のジョー・スーは、Appierが実施した、AIによるアドフラウド検出、対策に関してブログにまとめました。このインフォグラフィックスはApppierのアドフラウドレポートを画像で表現しました。レポートはこちらから入手できます。

AIでアドフラウドを撃退

ジョー・スー、最高技術責任者(CTO)、Appier

アドフラウド、つまり広告詐欺は、デジタル広告業界にとって大きな脅威となっています。全米広告主協会によると、アドフラウドによる企業の損失額は、2017年に65億ドルになると予測されています。また、Juniper Researchによる最新の報告書は、2018年にはアドフラウドによって広告主が190億ドルの損失を受けると予測し、その深刻な実態を明らかにしています。これは、オンラインおよびモバイル機器上の広告を対象にしたものであり、その損失は今後も拡大を続け、2022年には440億ドルに達する恐れがあります。

業界はこれまで、アドフラウドによる損失を軽減する効果的な方法を模索し、多大なリソースを費やしてきました。ここであえて「軽減」という言葉を使うのは、サイバーフラウドや金融フラウドと同様、アドフラウドの問題を完全に根絶する方法がないためです。つまり、悪事を働く者よりも、常に一歩先の対策を施すしかないのです。

これまでのアドフラウド対策は、そのほとんどが人間の定義するルールベースの手法に頼ってきました。単純な不正行為に対抗するには効果的な方法ですが、アドフラウドはより巧妙化しており、従来の対策では不十分となっているのが現状です。

AIベースのアプローチ

アドフラウドがより巧妙化し、その検出が困難になるに従い、不正検出メカニズムも並行して進化しないとなりません。これを実現する唯一の方法は、人工知能(AI)を利用することです。

AIベースのアドフラウド検出システムは、基本的にルールベースのアプローチから始まりますが、自己学習することで、検出された疑わしい各アクティビティを学習し、防止レイヤーを構築します。また、AIベースのモデルは、従来のモデルよりも、より多くの次元でパターンを判別できるという利点もあります。

通常、従来のルールベースのモデルは、1から3次元のアクティビティを分析しますが、AIベースのモデルは、80以上の次元を一度に分析できるため、非常に精巧な不正パターンを検出することが可能です。また、自己学習するAIベースのモデルは、従来のシステムを回避する新しい不正パターンに対応し、自ら進化することもできます。

AIベースのアプローチの優位性を実際のキャンペーンで検証

Appierは、AIベースのアプローチによる優位性を実証するため、2017年5月から8月の4か月間、アドクリックやアプリのインストールを含む、40億件以上のキャンペーンデータポイントを自社ネットワーク上で検証しました。その結果、AIベースのアドフラウド検出モデルは、従来のルールベースによる検出方法と比較して、2倍の不正行為を特定できることが明らかになりました。また、AIベースは、広告主にとってコスト効率も高く、従来のルールベースよりも、3.6%高い費用対効果(ROAS)を生むことも実証されました。

AIベースのアプローチの最大の優位性は、これまで報告されていなかった精巧なアドフラウドのパターンを検出できる能力です。AppierのAIシステムが検出した不正パターンの一つは、私たちが「カメレオン型」と呼んでいるものです。これは、不正なサイト運営者が、最初は正当なサイトとして装い、後から不正なインストールを実行させるものです。

当社のAIが検出したもう一つの疑わしいパターンは、私たちが「インベントリーバースト型」と呼んでいるものです。このパターンでは、不正なサイト運営者が、アプリ内で適切レベルのデータ通信が行われていないにもかかわらず、異常に高い広告表示回数を発生させるものです。

最後に

Appierによる同調査の詳細は、こちらからダウンロードできます。アドフラウドは現在、業界に何十億ドルもの損失を与えており、検出することが非常に困難になっています。従来のルールベースによる手法には、ますます巧妙化している新しいアドフラウドのパターンを検出する上で限界があります。そのため、アドフラウドを撃退するには、多次元データを分析する能力と自己学習能力を備えたAIベースのアプローチの方がより優れているのです。

ジョー・スーは、Appierの最高技術責任者(CTO)兼共同創業者です。スーは、高校時代からシステムのハッキングや開発を行っており、高校生で、台湾の国家機関である、高速コンピューティングプログラムが開催した第三回のコンテストにて優勝しました。その後もソーシャルゲーム、VoIP、分散コンピューティング、オンライン上の地理情報など、様々な分野でのシステム設計・開発に携わっていました。Appier 入社以前には、高機能モバイルソーシャルゲームの開発を行う独立系のゲーム会社、Plaxie社を共同で創業、経営した経験があります。それ以前は、Artdio Technology社でプログラマーを務め、台湾有数のハイテク研究開発機関であるITRIのコンピュータ&コミュニケーション研究所にて調査に従事しました。